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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)30号 判決

被告人

安江春次

主文

本件控訴を棄却する。

当審において生じた訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人高木英男の控訴趣意第一点について。

原判決が判示第一において認定した事実の要旨は「被告人は昭和二十四年六月二十四日貨物自動車で木材を岐阜県内から愛知県津島市まで輸送の途中行使の目的を以て判示時刻頃場所において既に無効に帰した判示の木材出荷証明書の有効期間欄の日附を判示の如く改変して同年六月二十四日より同月二十五日迄有効な出荷証明書なるが如く仕做して公務所の印章署名ある公文書一通(証第一号)の僞造を遂げ判示日時頃場所で判示巡査より出荷証明書の提示を求められて右僞造の木材出荷証明書を同巡査に示してこれを行使した」というのであつて、右の事実はその挙示の各証拠を綜合すればこれを肯認するに充分である。ところで木材の輸送については同年六月二十日以降その数量が七屯又は二十石以上に限り出荷証明書を必要とする(同年五月二十七日各省庁令第一号指定物資輸送証明解則により)ことは所論の通りであり、而して右被告人輸送の木材数量が仮りに所論の如くであつて右証明書の必要がないのであつたとしても、これがため前示公文書僞造並に同行使の犯罪の成否に影響を来すべきものではない、のみならず前記各証拠の外被告人の司法警察員並に検察官に対する各供述調書に徴すれば右木材の数量は所論の如き石数ではなく二十石以上であつたことを看取するに難くないのである。

されば原判決が前記被告人の所為につきこれを前示公文書の僞造並に同行使の罪に問擬し該当法条を適用して処断したのは正当であつて、原判決には何等所論の如き法令適用の誤等存することがなく、論旨は理由がない。

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